Cross on (Y・Residence) 設計概要
視界は別府市の市街地を一望できる絶景の傾斜地に突き刺されたように建てられた住宅である。元々、この辺り一帯着手以前は深い竹林に覆われた地であった。唯、周辺の地形から想像してみると、伐採後はパノラマ的眺望が期待できたので傾斜角25度前後の当地を建設地として決定させて頂いた。斜面に建てられたRC3階建の基礎には、狭い作業スペースでも施工可能なG-ECS工法に依るパイルが計45本打ち込まれているが九州には、適した杭打ち機は2台しかなく、手配にも時間を要してしまった。 設計当初から室内には市街を見渡せる眺望用の窓を設ける事と自然に対比しての人工物をメリハリの有る形状を与えて表現する事が無意識下に当地には適っているように思えていた。結果的にクロスオンと名付けた建物南側ファサードは外部に開放されるところを建物中央部を中心に十字型に分散配置させている。 昼はそこから光を取り込み、夜は逆に光が放たれてゆく。玄関ホールから連なる階段室は、階段とガラス床(廊下)に降り注ぐトップライトからの光とそこにセットされたエレベーターが垂直性を高める空間であり、更に各室の水廻り空間を全て各個室から独立したようにその中にインクルード(include)させる事で階段室全体をアクティブなものに仕立て上げている。又、階段室からはリビングの二層吹抜部へガラスブロック超しの光がもたらされる。階段室とリビングは、おだやかに結ばれている事が感じられるはずである。 四つに大きく分散された個室は、南側のスリット状開口部で室内は奥まで明るく、ドレスコーナー・サニタリーを組み込む個人の全てのものが納められる独立性の高いプライベート空間である。又、地階の2室では家族の成長変化にも対応できるよう可変性をもたせる事とした。 付属の駐車場棟は、地階に倉庫を持つ二層構成であるが、太陽光パネルを載せる6m角架台屋根は6m間隔の柱位置を45°回転させた位置で一辺を南面に正対させ北側へ20°の傾斜を持ち浮上している。 その屋根板自体は、四隅を柱にアンカーされた8本のコラムで支えられている。 全く違った表現の住宅棟と駐車場棟。その隙間には別府市街の一部を映し出しながら、二棟は混然一体を成している。